伊勢の名店「赤福」の商品管理に関する問題が連日報道されています。
発覚した後の各方面の報道を見ていると、収束に向かうどころか新たな問題点が次々浮かび上がって来て、根の深さを露呈しているように見受けられます。
規模は全く違いますが、同じ食品を製造販売する者として自分なりに考えてみました。
赤福の企業姿勢としての問題点はどこにあるのでしょうか?大きく2点に絞ってみたいと思います。
1)商品の管理がずさんだったこと。
2)問題が明るみに出た後に、事実を正しく公表しなかったこと。
1)の中としては、賞味期限の改ざん、返品製品の再利用、原材料表示が不適切、本来の製造日を正しく表示しないなどの事実が明らかにされてきています。
食品として寿命がきた製品を、何の手も加えず再び外装だけを着せ替えて再出荷するというのは、明らかに消費者を欺く行為ですので、許されるべきではないと思います。厳しく糾弾されても仕方ないでしょう。
法令で決められた材料表示に偽りを記載したことも同じく許されないことです。消費者が商品選択の拠り所にしている「表示」が信頼できないものであるならば、その存在自体の信頼が揺らぐことになります。 国産の原材料のみを使用しているはずが、外国産を混ぜていたことなどがこれに該当します。
2)については経営陣の、問題発覚当初の発表と、その後次々明らかになる現実とのずれ、それに訂正を重ねるなどは、天下の有名老舗としてはいささか恥ずかしい態度と批判されても仕方がと思います。 過去に問題を起こした企業にも、同じような態度が見受けられましたが、初めからすべてを公にして謝罪した方が、後々のためには良いのではないかと思いますが、そうできない何かがあるのでしょうか?
一方で、同じ食品製造業者として、部分的に同情するのが、次の2点です。
冷凍保存した製品の解凍した日を製造日として出荷していたケースは、確かに消費者の意識とズレていると思いますが、指導する立場の当局の見解では、これを認めるところもあるようで、赤福も過去に確認を行っているとのことです。当事者としては、やや不本意な批判との認識かも知れません。
もう1点、返品商品を餅、餡に分けた2次的再利用するという工程は、現在の衛生・品質管理の常識に照らすと、許されざることのようですが、和生菓子は保存効果の高いことで知られる砂糖を多く含み、且つ一度高温で加熱されていて、品質をある程度の期間保てるようですので、原材料としてだめになる前に再度加熱加工するとで、再利用可能という判断に基づく行為だったのでしょう。 社長の会見で、「材料がもったいなかったので・・」というコメントがありましたが、老舗和菓子店の考え方の一端を端的に表しているのかも知れません。
現在の飽食を支える、大量生産に伴う大量廃棄の現実を一方で思うとき、考えさせられてしまうところです。 しかしながら、リサイクル、リユースという考え方は確かに大切ですが、安全はその上にあるべきですから、作り手の側の常識と理屈が、買い手側に受け入れてもらえないかもしれないという認識がありながら続けてきた後ろめたさが、事実の隠蔽に繋がったのかも知れません。 長い経験に裏打ちされ、時間をかけて培われてきた日本人の美徳である「倹約」という考え方と、法令に則り食の安全を確保するという姿勢が、相反するものとは思いたくありませんが、作り手としては難しい舵取りが必要かも知れません。
不二家、ミートホープ社、石屋製菓、比内地鶏等々、食品を扱う企業の問題が次々に発覚し、作り手に対する信頼が揺らぐ事態を招いています。 製造者の消費者に対する背信という結果になってしまった今回の問題は、一方で自分自身の考え方を顧みてみる機会にもなっています。作り手としても、一方では消費者でもある訳ですから、常に両方の立場で考え、製品を作りお届けするというバランス感覚を持ち続けることの大切さが今回の問題で身にしみます。
対岸の火事と捉えず、足下をもう一度見直してみなければいけませんね。
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