とても重いテーマの作品です。真夏の陽光の下、夏休み真っ盛りの大都会のシネコンで見ましたが、お子様向け作品を見に来ている幸せそうな親子連れの人並みをかき分けながら、金属の固まりを飲んだような感覚での帰途になりました。
途上国における闇社会、貧困からくる悲劇、前編を通した悲惨な描写は、かなり現実を反映しているとのこと。
本作で描かれた白人や日本人の幼児買春客たちは、憎むべき現実が存在していることを告発し、私たちが知らない影の世界を暴いて白日にさらしてくれます。 大多数の普通の者は、この変態野郎達を蔑み、悲惨な子供達の現実に心を痛めることになるのです。 売春宿でエイズに感染し、捨てられた少女がやっとの思い で故郷までたどり着き家族の元に戻りますが、その末路は本作中最も悲惨なシーンとして忘れられません。
そして平行して描かれるもう一つ のおぞましきテーマ、生きた子供の臓器売買については? 梶川の立場に自分が立たされたらと考えたとき、突然その重さが圧倒的な現実感を持って迫ってきま す。この夫婦の言葉に、どこかで共感している自分の心に恐怖と嫌悪を抱いてしまいます。手術を阻止しようとする者、事実を告発しようとする新聞記者、我が 子を救いたい親、三者三様の思いが交錯する梶川家のシーンは、象徴的で、とても考えさせられる演出だと思いました。
エンディングのワンシーンについては、賛否が分かれると思いますが、残念ながら私は違和感を抱きました。 上映終了後、これについての客同士の会話から、ストーリーの結末を一部曲解しているニュアンスが聞き取れ、その感を強めました。
また、状況設定にやや強引さが見られるところ、終盤のアクションシーンの挿入の仕方など、やや首を傾げたくなるところがあるのが残念な部分ではあります。少しマイナス点でしょう。
豊原功補演ずる清水が異国と日本の距離感を縮め、リアリティを高める役柄として印象に残ります。そして、タイ人の重要な登場人物男女二人が、日本人に対してぶつける激しい嫌悪感は、強烈なパンチを私達に食らわせます。
サスペンスとしての結末も楽しめますし、最後まで釘付けられる質の高い社会派作品として高評価したいと思います。
109シネマズMM21にて
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